生活保護の問題点


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生活保護の問題点

生活保護とワーキングプアの問題

生活保護とワーキングプアの問題 我が国がデフレ経済に陥って既に15年になりますが、その間、勤労者の平均所得は減少を続けてきました。一方で生活保護の支給額は減っていないため、生活保護支給額と最低賃金の逆転現象が起っています。
つまり、生活保護支給額がフルタイムで働く人の最低賃金を上回る逆転現象が起きています。しかも、生活保護の受給者は保護費に加えて医療費や介護費用が免除になり、住民税・国民健康保険・介護保険料・国民年金保険料・NHK放送受信料などが免除になります。
従って、生活保護受給者の実質年収を勤労者の所得に換算しますと、年収400万円に達するという試算も報告されています。また、夫婦と子供2人の世帯の場合は、実質年収が500万円に達する場合もあることが指摘されています。
その結果、就労可能な若い世代に於いて、この逆転現象は社員になれずフリーターや契約社員として働いている人達の労働意欲を減退させていることは否定できません。
つまり、「あくせく働いてワーキングプアになるよりも、失業を理由に生活保護を受給した方が得」という心理が、就労可能な世代の生活保護申請を後押ししていると言えます。
従って、最低賃金が上昇しフルタイムで働く人の賃金が生活保護支給額の水準を上回ることが最も望ましい状態ですが、景気が回復しなければ一朝一夕に解決できる問題ではありません。
また、一方で「生活保護支給額の水準が適正なのか?」という議論があることも事実です。例えば、先進諸外国の同様の制度と比較してみますと、比較対象のイギリス・フランス・ドイツ・スウェーデンの中で日本の支給額は最も高くなっています。
特に、日本の支給水準は、フランスとスウェーデンの約2倍になっていることは驚きです。只、社会保障制度が異なる諸外国と、一概に金額だけで比較することに余り意味はありません。
そして、もう1つの問題点は、世帯所得が生活保護支給基準を下回る世帯が依然として多いということです。2007年のある試算によりますと世帯所得が生活保護支給基準を下回る世帯が705万世帯に対し、その内、生活保護を受給している世帯は108万世帯に過ぎないという調査結果が出ています。
つまり、生活保護を受給している世帯の割合は約15%に過ぎず、残りの85%の世帯は制度の認識不足かモラルやプライドが高いという理由で生活保護を申請していません。
従って、今後も生活保護支給額とフルタイムで働く人の最低賃金の逆転現象が続くと、85%の世帯が生活保護の申請を始める可能性は否定できません。


増え続ける高齢者の生活保護

増え続ける高齢者の生活保護 2015年の65歳以上の人口は約3,394万人ですが、2025年には3,658万人に増加し2035年には3,740万人・2045年には3,857万人に増加することは間違いありません。
つまり、2015年に比べて30年後の2045年の高齢者の人口は463万人も増加するのです。
近い将来に「東日本大震災」級の大災害が頻発し核戦争でも起きない限り、高齢者の人口は間違いなく増えるのです。
しかも、日本の近未来の社会保障は不安が一杯です。何しろ将来の社会保障の道筋を決めているのは、現在、高齢者である政治家なのです。自分達が生きている間に、痛みを先取りする様な政治家は残念ながら居ないからです。
また、1,000兆円に達した国の財政赤字を減らすには、国が個人金融資産1,500兆円に手を突っ込むしかありません。財務省の戦略は資産課税を強化しマイナンバー制度を活用して税の徴収漏れを減らすことです。その戦略の第一弾が相続税の課税強化なのです。
従って、例えば、年金の給付額や医療費や介護費用を考えても、今より改善しているとは考えられません。つまり、年金の給付額は減少し医療費や介護費用は増えているのではないでしょうか。
その結果、年金だけでは暮らせない高齢者が増え、生活保護に頼らざるを得ない人が増える可能性が十分に考えられます。従って、生活保護と年金をリンクさせた新しい発想の高齢者のセーフティーネットの構築を急がねばなりません。