生活保護不正受給


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生活保護不正受給

生活保護不正受給の現状

生活保護不正受給の現状 生活保護の受給者数は2012年7月に212万4,669人と過去最高を記録し、その後も増加傾向が続いていますが受給者数の増加に伴って不正受給の摘発件数も増加しています。
厚生労働省の2010年の調査によりますと、生活保護の不正受給件数は全国で2万5,355件・全体に占める比率は1.8%・不正受給金額は128億7,425万円に上っています。
これらの殆どは、収入が無いと申告したにも関わらず収入があったケースや、申告よりも収入が多かったケースです。
しかし、専門家に言わせますと、この数字は氷山の一角ではないかとの指摘が多くなっています。何故なら、生活保護の現場では、もっと高い比率で不正受給や不正受給を疑われるケースが見つかっているからです。
そして、不正受給もいくつかのパターンに分類することができます。まず、最も悪質な不正受給は収入や資産がありながら、偽った申告を行って生活保護費を受給するパターンです。つまり、故意や虚偽による申告を行って生活保護費を不正に受給するパターンが横行しており、悪質性が高い場合は詐欺罪で逮捕に至る場合も少なくありません。
従って、冒頭の2010年の生活保護不正受給件数2万5,355件は、この様な刑事事件に発展したケースが殆どだと考えられます。
しかし、実際の不正受給の大部分のケースは、故意に行ったのか過失によるものなのかが判別し難いケースが多いのです。例えば、被保護者も知らなかった遺族年金が見つかった場合や、後で生命保険の満期金や払戻金などが見つかった場合です。
また、競馬や競艇などのギャンブルの配当金やインターネットのオークションやフリーマーケットで家具や調度品を売った場合の収入などです。更に、以前、友人に貸していたお金が返済された場合や親族や友人からの援助を受けた場合などがあります。生活保護の収入の概念は非常に広く、上記の様な収入のケースは全て世帯の収入と見なされています。
従って、これらの事例が不正受給と見なされるのか、単なる過失による申告として生活保護費の返済で処理されるのかは現場のケースワーカーの判断となります。
つまり、警察官や税務署員の様な強制権限のない現場のケースワーカーは、特に悪質なケースを除いてなるべく事を荒立てることはしたくない筈なのです。
何故なら、最近の事例でケースワーカーが被保護者の自宅を訪問した際に、暴力を振るわれるケースや包丁やナイフで脅される事件が頻発しています。
また、実際に殴られて怪我をするケースや刺されて負傷するケースも出ています。更に、2005年に長崎市の福祉事務所に於いて、生活保護の再受給の相談に来た男性に職員が刺殺される事件も起きているのです。被保護者にとって、生活保護費は生きるか死ぬかの分かれ目にも成り得る大事なお金ですから、福祉事務所やケースワーカーの対応によっては逆上する人も多いのです。
この様な生活保護制度の現状を、ある大阪市のケースワーカーは「生活保護のケースワーカーは命の危険性がある一般事務職である」と表現しています。
そして、ケースワーカーと被保護者がもめる原因の殆どは、不正受給が疑われる収入の認定を巡って起きているのです。
この様な現状が、厚生労働省が把握している不正受給件数が氷山の一角と言われる所以なのです。


生活保護不正受給の背景

生活保護不正受給の背景 生活保護不正受給の背景の1つ目に、被保護者のモラル・ハザードがあることを上げなければなりません。以前は生活保護を受けること自体が国や地方自治体に迷惑を掛ける不名誉なことだという意識が強く、受給資格を満たしている人でも中々、申請しない風潮がありました。
従って、不正に生活保護費を受給しようという発想は起きなかった訳です。しかし、現在は地域社会の崩壊で社会の横の繋がりが無くなったこともあり、生活保護の受給は不名誉なことでも何でもないという風潮の世の中になっています。
これと同様の風潮が「消えた年金問題」にも見えます。「消えた年金問題」は親の死を隠して年金を受給していた問題で、生活保護不正受給と同根の問題と言えます。
そして、生活保護不正受給の背景の2つ目は行政側にあります。生活保護行政の現場である福祉事務所や地方自治体窓口のケースワーカーなどの生活保護現業員の配置数不足が、不正受給の増加に拍車を掛けているのです。
つまり、生活保護事務の事務処理の膨大さに訪問業務を加えると、現業員の負担は少なくありません。その上、生活保護の申請者の増加に現業員の配置が追い付いていないのが現状なのです。その様な現業員不足の中でチェックミスや確認漏れや不作為が生じ、不正受給を許す土壌ができていると言えます。
生活保護不正受給の背景の3つ目は、不正受給増加の要因に国の制度の欠陥が見えることです。地方自治体は不正受給の摘発をすることで、3/4交付されている国庫負担分を現年度交付金と相殺しなければならず不正受給を積極的に摘発すればするほど地方自治体の負担が増える仕組みになっています。以前の生活保護費の不正受給などを前提にしていないシステムが、未だに改正されていない行政の不作為がここにもあると言えます。
この様な制度の下では、現場のケースワーカーなどの現業員が、不正受給摘発に及び腰になることは容易に想像できることです。
従って、現場のケースワーカーなどが積極的に不正受給を摘発すれば、地方自治体の負担が減る様なシステムに改善しなければならないことは明らかなことです。