生活保護に対する厚生労働省の考え方


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生活保護に対する厚生労働省の考え方

増える生活保護関連予算

増える生活保護関連予算 2012年に212万人の過去最多を記録した生活保護受給者数は、その後も増加のトレンドが続いています。受給者数の増加に伴って生活保護の支給総額は4兆円に迫る勢いで、この金額は我が国の防衛費に匹敵する金額となりつつあります。
社会保障費が毎年1兆円増加する中で、厚生労働省の本音は生活保護関連予算を削減したいことは明らかです。
2013年秋の臨時国会で成立が予想される「生活保護法改正案」のポイントは①社会的自立を促進する制度設計と②生活保護の適正化の2つですが、その目的は就労を促進することで生活保護費の抑制を図り実施機関の調査の権限を強化することで不正受給を減らすことを狙っています。
つまり、いずれも生活保護費を抑制することに繋がる法改正で、不正受給を減らすことは言うまでもありませんが就労可能な年齢の受給を減らそうとしている訳です。
従って、厚生労働省の本音は本当に生活保護が必要な高齢者や傷病者や障害者や母子家庭の生活保護費を大幅に削減しようとは考えていませんが、これらの人を含めて生活保護の受給条件が厳しくなることは間違いありません。


長期的なビジョンの欠如

長期的なビジョンの欠如 生活保護制度だけを見ても厚生労働省の長期的なビジョンが欠如していることは明らかですが、伝統的な場当たり的政策は社会保障政策全体に言えることです。
例えば、日本の社会保障が北欧の様な「高負担・高福祉」国家を目指すことは無理としても、「中負担・中福祉」国家を目指すのか「小負担・小福祉」国家で行くのかのビジョンが明確ではありません。従来から政府は「中負担・中福祉」国家を目指していると明言していますが、現在の財政状況では将来的には「高負担・小福祉」国家か「中負担・小福祉」国家になることが危惧されます。
従って、医療・介護・年金・就労支援・生活保護を含めた、包括的な社会保障のビジョンとシステム作りが必要となります。
例えば、民主党が主張した月額7万円程度の「最低保障年金」や、年金や生活保護を止めて税方式の「ベーシックインカム」を導入することなどが議論されても良い筈です。
「ベーシックインカム」とは最低限所得補償の一種で、政府が全ての国民に対して最低限の生活を送るのに必要な現金を無条件で定期的に支給するという構想を意味します。
つまり、「ベーシックインカム」は国の税収を機械的に国民に分配するだけですから、複雑な行政組織や行政の恣意的な運用の心配がありません。
従って、「ベーシックインカム」は、一見、社会主義システムの様に考えられますが、自由主義・資本主義経済体制で行うことを前提にしています。
つまり、「ベーシックインカム」の最大の利点は「小さな政府」で実現できるところで、その意味では「大きな政府」が必要な社会主義システムとは根本的に異なります。
また、現在の日本の様な非常に複雑な社会保障システムや、それに関わる官僚体制や多くの公務員が必要無くなるところが大きなメリットなのです。
現在の日本のシステムから一気に「ベーシックインカム」に移行する事は容易ではありませんが、現在の非常に複雑な社会保障システムを運営するために多くの経費が掛かっていることも忘れてはなりません。